幻映画専用劇場

映画とホームシアターについてのブログ

ふや町映画タウンについて

2014年5月8日、 “ふや町映画タウン” でグーグル検索したら、検索結果の2番目に僕のこの放置ブログがヒットして驚いた(1番目はふや町の公式ページ)。

実際はリンク先に登録しただけで、ふや町について一切なにも書いていない。他のサイトをのぞくと愛にあふれた記事をいくつか見かけるのに、なぜそれらを押しのけて僕のブログが上位に表示されるんだろう。

でもせっかく上位に表示されるのだから、僕も「ふや町映画タウン」について語ろうと思う。このサイトを訪れた人に少しでもこの店の事を知ってもらいたい。

 

f:id:hisashiblack999:20130719151105j:plain

ふや町映画タウンとは、レンタルビデオ店である。

場所は京都府京都市中京区麩屋町通二条下る尾張町225第二ふや町ビル2F。

在庫はVHSのみでDVDやBlu-rayなどはない。対象作品は映画のみ(アダルトビデオなどはないがピンク映画はある)。だが、この“映画のみ”の在庫がすごい。日本中探してもここにしかないVHSが山ほどあるのだ。

VHSが生産されなくなってもう何年も経つが、それでも映画のタイトル数はVHS>DVD>BDなのである。おそらく今でも。

VHSの黎明期はレンタルビデオ店の黎明期でもあり、出店数が増加するにともない、当然映画タイトルの需要が増える。でも名作と言われる映画なんてほんの一握りでこれだけでは全然店の棚が埋まらない。なのでワケのわからんB級ホラーや大昔の映画、ポルノか映画かわからんようなものまでたくさん発売された。出せば売れた時代なのだ。結果、VHSの総タイトル数はそのすべてを把握できないほど膨大な数になった。

この店の店長はまさにそんな時代に青春時代を過ごし、どっぷりとVHS時代の映画にはまった人だ。そして今でもどっぷりと浸かっている。 


僕とふや町映画タウンとの出会い

今から17~20年ぐらい前か。

かつては京都大学の近くに「ステーション」というレンタルビデオがあった。

当時大学生だった僕は、やはり地元のレンタルビデオ店でバイトを始め、映画にハマり始めた。同じ映画好きのバイト仲間に「京都にすごいマニアックなビデオ屋があるらしい」とステーションの存在を聞き、一緒に京都まで借りに行った。ステーションはやはり噂通りの見事な品ぞろえで棚を見てるだけで幸せだった。僕はジョン・ウォータースの初期作品やケネス・アンガーなどを借りた・・・記憶がある。しかし、まぁ遠いので通う事などできず、結局一回しか行かなかった。後に知る事になるがこのステーションのバイト店員の一人がふや町映画タウンの店長なのである。

やがてビデオの主流はVHSからDVDに変わり、1本あたりの仕入単価も安くなる。TSUTAYAとGEOが勢力を増し、レンタル料は1枚100円のデフレ価格になっていき、個人経営のレンタルビデオ店が軒並み閉店していく。僕のバイト先のレンタルビデオライトも、ステーションもその中のひとつだった。

そして、彼はステーションの閉店を機会にオーナーから店の在庫ビデオを買い取り、自分のコレクションと合わせて「ふや町映画タウン」という店を2002年10月17日に開く。以後11年と数ヶ月間、店長は一人で毎日(何回か休業をしたが奇跡的に復活)店を開いている。

僕は年に1~2度、ふや町映画タウンに行ってビデオを借りる。もっと行かなければならないのだが、はっきり言ってさぼりがちなのだ。にもかからわず店長はめったに来ない僕との会話(もちろん映画談義)をとてもよく覚えてくれている。

僕が店長の話で好きなのは、90歳ぐらいのお客さんの話。

その客(おじいちゃん)は山中貞雄のデビュー作「磯の源太 抱寝の長脇差」を観た事があるらしい。戦後生まれの僕達は山中作品は現存する3本しか見れないのが常識であり、その他はすべて幻の作品だ。店長が「どうでした?」と聞いたら「おもしろかった」とニッコリ答えたそうだが、そのおじいちゃんの話がホラなのかボケなのか、または真実なのか、謎ですなぁ~(笑) といつも盛り上がるww

また、店長にはいろいろな映画作家を教えてもらった。

土本典昭シャンタル・アケルマンフレデリック・ワイズマン、ホルヘ・サンヒネス、ヴァレリオ・ズルリーニ、アンドレ・カイヤット・・・どれも面白かった。ここでしか借りれない監督作は多い。VHSでは発売されていたが、DVD/BDは未発売の映画。今やそれらは失われた映画だ。探し出すのはもはや至難の業だ。でも、そんな映画がここにくれば普通に置いてある。

 

ただ、この店は常に経営危機に直面している。まぁ当然かもしれない。新作も話題作もなく、DVDもBDもなく、あるのは旧作のVHSのみだ。客がまったく来ない日も多いらしい。失われた映画が揃っていることはありがたいが、悲しいかなこの魅力を理解する映画好きはあまりいないようで、毎月定期的に通う常連は極めて少ないらしい。

ついに今月末で店を閉めるかもしれないとホームページに告知があった。資金が底を尽きたとの事。このような事態は、この店に一度でも行った事がある人はいずれ来るとわかっていたはずだ。絶対誰も借りない映画ばかりを食費をけずって買い続ける店長。ラインナップを増やす事に命をかけていると言っても過言ではない。店長は否定するだろうが、だって実際そうなんだから。儲かる訳がない営業スタイルはそのまま店長の生き様だ。僕だって映画が好きだ。だが、店長の前ではそれは言えない。

僕のような年に1~2回しか行かない連中は常連ではない。忘れた頃にやってきて、レアものばかりを5~6本借りて行く。これはただのひやかしだ。でも僕も含め、めったに行かない人が今月こぞって店に行き、たくさんレンタルすればまた営業を再開できるかもしれない。8000本近い映画達の寿命を延ばす事ができるかもしれない。

店長すいません、今月借りに行きますんで。


僕の記憶に残る店長の名言

・ミゾグチの祇園の姉妹はコメディ

・セルジュ・ブールギニョンは一発屋

ビリー・ワイルダーっておもろいけどちょっと尺が長いわ


ふや町映画タウンについてもっと詳しく知りたい方は 

f:id:hisashiblack999:20140509211132j:plain

 

DVU2というミニコミ誌に店長のロングインタビュー載ってます。